東京レコ屋ヒストリー

f:id:kuromaguro96:20230731132230j:image

つい先日近所の図書館で見つけたので早速借りて読んでみた。密林のレビュー通り、話があっちこっちにとっ散らけし感はあるけどレコードもしくは録音芸術と共に歩んできたレコード屋の歴史と、レコード屋を取り巻く様々な人々の想いと人間模様を記録しており資料的価値も高い。

マソハッタソに関しては平川社長は至るところで登場。第六章でも書かれているけど、平川社長は当時の異常なレコードブームに対して、何処か醒めた視点は持っていたと思う。当時自分は二十代後半であったが、平川社長から「三十歳くらいで自分の進む道をきちんと決めた方がよい」と何度か言われたのもブーム去って弾きだされてからでは遅いと言われてるような気がしていた。実際、三十路手前で突発的に辞め、出来心で某店でもう一年ちょいほど働いてから数ヶ月の週休7日制を経て弱小通関会社へ。両方の経験が今の密林仕事でも活きたのは偶然だったけど、結果的には良かったのだろう(週休7日時代は40社くらい受けても軒並み落とされたの精神的にキツかったけど)。でもそんな醒めた感覚持ちながらも皆が大反対したリセット・メレンデスのグリグリ再発をドカンと当てる平川社長の嗅覚の鋭さは流石である。マソハッタソを代表する人として、清水兄弟の話もあればもっと良かったかな。レキシソトソは平川社長、もうひとりの元ヤマ八の取締役と兄弟の4人が株主だったはず。やはりね、株主が強いんすよ。

2号店の小林さんもMUTEKIへの移籍話なども交えて登場。あの移籍は当時かなりの衝撃だった、一緒に数名が移籍したのもあり。そういや2号店といえば小林さんの抜けた後を仕切った入江さんもあの時代では外せない方。US行ったときルイ・ヴェガ宅に泊めてもらったとか豪快エピソードの持ち主。今は某所在住で私も偶然単身赴任した際にひょっこり遊びに行ってお話したっけ。その後まもなく転勤になったので一度きりになってしまったが。

ちょこっとだけどイタチョーこと板垣さんも登場。やはり全盛期の1号店の顔といえば、板垣さん前川さんの2人じゃなかろうか。一方アパッチさんは名前こそ出てこないがLex Boxの顔ネタとして取り上げられているのでレコード好きで知らない人は居ないくらい有名人のはず。本業は通販のヘッド兼レーベルのマネジメントで、昼夜休み無く一年中働いていた。アパッチさん、元気かな。

マソハッタソ系列のラストチャンスレコードの名前が一瞬出てくる。CSVが消滅してそこの什器がラストチャンスに渡ったとのこと。そんなラストチャンスも私が入社したころは既に営業はしておらず、しばらくして中の在庫は丸ごと買い取られた。買い取ったのはこの本でもたびたび登場するフラッシュディスクランチの椿さん。

ヴィニプラの母体がジャズの廃盤屋だったのは知らなかったな。あそこはいっとき、ヒップホップのプロモが超充実していたから私もかなり課金した。

HMVも登場するが、今でこそレコードをメインで取り扱っているけど、90年代においてはほぼCDのみだったのでは。なので私の記憶にはあまり印象に残っていない。90年代初期はやはりWAVEの存在感と影響力が絶大。それからビデオセンター手前にあった頃のタワレコは地味にダンス系12インチのUS盤があったりして重宝した。

D◯Rの地下時代はネットで接客を酷評されてたけど普通だったと思う。カウンターの位置が高いから、渡し方が上から目線スタイルに見えただけの気も。そういやD◯R代表取締役の岡本氏にはインタビュー取らなかったのかな。00年あたりからの数年間は、渋谷のレコード屋で一番勢いあったのは間違いない。そんなワイも一年ちょっとゲソ付けてお世話になったのは、マソハッタソで仲良かった人が行っててスタッフと結構仲良くなり、しまいにはD◯R飲み会にただ一人マソハッタソの者として参加したこともあったから。マソハッタソ辞めて屋久島へ放浪する直前に、ちょっとだけ不安になってバイト情報誌を買うとたまたま卸スタッフを募集してた。出来心で履歴書送ったら屋久島でのんびりしてたところに連絡が入った。ワイが事実上他店舗に行ったことは波紋を呼んだらしいし、不義理だとも言われたけども知らんがな。マソハッタソ在籍時、もう一人の取締役から命ぜられて立ち上げたディストリビューションセンターが中途半端な仕分けハブでしか機能してなくて平川社長からは結構嫌なプレッシャーもあって(以下略)。まあそんなD◯Rも2 Much Crewのマエさんはじめ楽しい仲間と和気藹々やっていたが、先々の自身のキャリアを考えるとあんまり長居は出来ないなと思っていた。そして、ワイの退職後10年もしないうちにD◯Rもレコード屋からは足を洗ってしまった。

そう考えると00年代後半から10年代中頃までのレコード屋氷河期をサヴァイヴしたヅェットセットはホント凄いわな。

あと、個人的にめっちゃ気になったのは、第一章でUKのディストリビューターラゴス(Lagos?)と書かれているがラスゴ(Lasgo)が正解かと。UKはLasgoやWindsongあたりが、USはユニークやダウンタウン他たくさんのディストリビューターがあったけど現存する会社はほぼ皆無なんじゃないか。

とまぁ自分も遠い記憶を引っ張りだしてしょうもないこと書き散らけしたが、とりあえずはこの辺で。