東京レコ屋ヒストリー

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つい先日近所の図書館で見つけたので早速借りて読んでみた。密林のレビュー通り、話があっちこっちにとっ散らけし感はあるけどレコードもしくは録音芸術と共に歩んできたレコード屋の歴史と、レコード屋を取り巻く様々な人々の想いと人間模様を記録しており資料的価値も高い。

マソハッタソに関しては平川社長は至るところで登場。第六章でも書かれているけど、平川社長は当時の異常なレコードブームに対して、何処か醒めた視点は持っていたと思う。当時自分は二十代後半であったが、平川社長から「三十歳くらいで自分の進む道をきちんと決めた方がよい」と何度か言われたのもブーム去って弾きだされてからでは遅いと言われてるような気がしていた。実際、三十路手前で突発的に辞め、出来心で某店でもう一年ちょいほど働いてから数ヶ月の週休7日制を経て弱小通関会社へ。両方の経験が今の密林仕事でも活きたのは偶然だったけど、結果的には良かったのだろう(週休7日時代は40社くらい受けても軒並み落とされたの精神的にキツかったけど)。でもそんな醒めた感覚持ちながらも皆が大反対したリセット・メレンデスのグリグリ再発をドカンと当てる平川社長の嗅覚の鋭さは流石である。マソハッタソを代表する人として、清水兄弟の話もあればもっと良かったかな。レキシソトソは平川社長、もうひとりの元ヤマ八の取締役と兄弟の4人が株主だったはず。やはりね、株主が強いんすよ。

2号店の小林さんもMUTEKIへの移籍話なども交えて登場。あの移籍は当時かなりの衝撃だった、一緒に数名が移籍したのもあり。そういや2号店といえば小林さんの抜けた後を仕切った入江さんもあの時代では外せない方。US行ったときルイ・ヴェガ宅に泊めてもらったとか豪快エピソードの持ち主。今は某所在住で私も偶然単身赴任した際にひょっこり遊びに行ってお話したっけ。その後まもなく転勤になったので一度きりになってしまったが。

ちょこっとだけどイタチョーこと板垣さんも登場。やはり全盛期の1号店の顔といえば、板垣さん前川さんの2人じゃなかろうか。一方アパッチさんは名前こそ出てこないがLex Boxの顔ネタとして取り上げられているのでレコード好きで知らない人は居ないくらい有名人のはず。本業は通販のヘッド兼レーベルのマネジメントで、昼夜休み無く一年中働いていた。アパッチさん、元気かな。

マソハッタソ系列のラストチャンスレコードの名前が一瞬出てくる。CSVが消滅してそこの什器がラストチャンスに渡ったとのこと。そんなラストチャンスも私が入社したころは既に営業はしておらず、しばらくして中の在庫は丸ごと買い取られた。買い取ったのはこの本でもたびたび登場するフラッシュディスクランチの椿さん。

ヴィニプラの母体がジャズの廃盤屋だったのは知らなかったな。あそこはいっとき、ヒップホップのプロモが超充実していたから私もかなり課金した。

HMVも登場するが、今でこそレコードをメインで取り扱っているけど、90年代においてはほぼCDのみだったのでは。なので私の記憶にはあまり印象に残っていない。90年代初期はやはりWAVEの存在感と影響力が絶大。それからビデオセンター手前にあった頃のタワレコは地味にダンス系12インチのUS盤があったりして重宝した。

D◯Rの地下時代はネットで接客を酷評されてたけど普通だったと思う。カウンターの位置が高いから、渡し方が上から目線スタイルに見えただけの気も。そういやD◯R代表取締役の岡本氏にはインタビュー取らなかったのかな。00年あたりからの数年間は、渋谷のレコード屋で一番勢いあったのは間違いない。そんなワイも一年ちょっとゲソ付けてお世話になったのは、マソハッタソで仲良かった人が行っててスタッフと結構仲良くなり、しまいにはD◯R飲み会にただ一人マソハッタソの者として参加したこともあったから。マソハッタソ辞めて屋久島へ放浪する直前に、ちょっとだけ不安になってバイト情報誌を買うとたまたま卸スタッフを募集してた。出来心で履歴書送ったら屋久島でのんびりしてたところに連絡が入った。ワイが事実上他店舗に行ったことは波紋を呼んだらしいし、不義理だとも言われたけども知らんがな。マソハッタソ在籍時、もう一人の取締役から命ぜられて立ち上げたディストリビューションセンターが中途半端な仕分けハブでしか機能してなくて平川社長からは結構嫌なプレッシャーもあって(以下略)。まあそんなD◯Rも2 Much Crewのマエさんはじめ楽しい仲間と和気藹々やっていたが、先々の自身のキャリアを考えるとあんまり長居は出来ないなと思っていた。そして、ワイの退職後10年もしないうちにD◯Rもレコード屋からは足を洗ってしまった。

そう考えると00年代後半から10年代中頃までのレコード屋氷河期をサヴァイヴしたヅェットセットはホント凄いわな。

あと、個人的にめっちゃ気になったのは、第一章でUKのディストリビューターラゴス(Lagos?)と書かれているがラスゴ(Lasgo)が正解かと。UKはLasgoやWindsongあたりが、USはユニークやダウンタウン他たくさんのディストリビューターがあったけど現存する会社はほぼ皆無なんじゃないか。

とまぁ自分も遠い記憶を引っ張りだしてしょうもないこと書き散らけしたが、とりあえずはこの辺で。

90's Disc Guide

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90年代も遠くになりにけり、の想いがますます強まる2020年代、遂に90年代ディスクガイドも出ていた。それにしてもこの表紙は何とかならんのかと思って巻末クレジットみたら装丁はスケシン

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執筆陣みると何とも不思議な人選で、結果盤選も微妙な偏りがある、気がする。荏開津さんいないの何で。

ヒップホップは大前さんのみで構成されている。アルバムだけじゃなく、ミニアルバムやシングルも取り上げていて、90年代の主要アーティストは網羅してる感じ。意外とこの年代のリリースってそんなに無いんだな。エルドラドのシングル何枚か挙げてるならFlickは必ず入れて欲しかったが。90年代のヒップホップ誌を代表する名ライター、萩谷雄一さん加わっていたら、より面白くなったかも。

レゲエの系譜では、PJやチエコ・ビューティーにはじまりドライ&ヘヴィやリトル・テンポ、デタミなんかまでを網羅してるけど、三木道三はじめダンスホールごっそり抜けてんの、それいいんですか?Say my goddesの12インチなんかマソハッタソでもめちゃくちゃ沢山売れたよ。そいやランキンタクシーも入ってないよな。こーゆう時、変にお上品ぶるスタジオヴォイス臭のダメなところが露呈してると思う(個人の感想です)。レゲエ系選者全員一週間Miki-FM聴くの刑。

最後の方に女性シンガー特集に米光美保入れんかったの致命的。最近ようやくシティポップの系譜で再評価されたのに。ついでに言うならBUM TVのMCもやってた井上睦都実五島良子も入れとかんと。

ハウスやテクノは、国産もの個人的にそこまで追っかけて無かったから判断できん、省略。

まあ結構辛辣に書いてしまいましたが(反省はしていない)、一冊で90年代の音楽をある程度俯瞰できるのは良いし、巻末の90年代音楽史年表は便利。

 

metabolism

新陳代謝と言うべきなのか、単なる自転車操業なのか、レコードを売っては買っている。古いソウルなんかでサンプリング用でキープしてたが要らんだろうと少しずつリリースして、一方で買いそびれで気になっていた盤を買う。80年代90年代の教授作品や、ビョークの90年代後半作など。ヒップホップも少し絞り込んでも良いのかもしれないが、まだ手が回らない。有名アーティストでもプロモ盤でも何でも、ビミョーなものはリリースするか…でも今って12インチシングルは二束三文だからなぁ…

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話は飛ぶが、一時期狂っていた釣り道具、特にルアーも少しずつリリース開始。ルアーも過剰に持っていても使わないし、もし使ってみても根掛かり紛失リスクあるもんな。写真は名門メーカー、スミスのウッドルアー。可愛らしいルックスのハンドメイドルアーだが、果たして今の時代で価値付くのか。売れなきゃ寝かせよう。ザウルスのロッドやアブのリール、それに一部のルアーは息子に託す予定。スミスの住所、まだ目黒区青葉台の頃。何とこのスミスが出たあとに、何とあのマソハッタソのディストリビューションセンターと言う名の仕分け&売れ残りカス在庫ブチ込み倉庫が入るという超偶然かつ誰得裏話。ワイは個人的にテンション上がり、スミスが看板だの何かしらのブツ残して無いかなーとアチコチ見渡してみたけど何も無かったのでした(苦笑)。

Bjork Orchestral

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かれこれ1991年からのファンでありながら、一度もライブ観ていない体たらくでしたので、落し前つけるべく行ってきました。SS席¥18K。

マイメンと国際展示場駅前で缶ビール飲んでウォームアップ。17時前に会場着くとすでに長蛇の列。想像と違い若い人も沢山いて、長い活動歴で幅広いファン層獲得してきたんだなぁとしみじみ。18時に開場すると物販も大行列。デビューアルバムジャケTは後日公演で販売らしく、最新作LPも限定カラーヴァイナル¥9Kで撃沈。皆んなツアーTシャツやトートバッグ鬼買いしてましたね。日本の経済もまだまだ大丈夫。19時定刻ギリでインするとちょうどオンタイムで開演。曲間でどうにか指定席辿り着くと、関係者ぽいXBすぐ後ろで、B3-10番と真正面。最高のポジションでAuroraやCome to me、Jogaに磯辺など神曲連発。一曲終わるごとに"ありがとう"と言うビョークが可愛らしくて素敵。32人編成のオーケストラとの合わせも素晴らしく、アイスランドから来たコンダクターの方が阿吽の呼吸なのか、時折ビョークも振り返りながら確認して、しっかり合わせてたのが印象的でした。

ビョークは着物っぽい振り袖で胸前がやや大きく開いた白/緑/紫色を基調としたドレスを纏い、お水はペットボトルじゃなくグラスが置いてあったの地味に感動。声質も声量も、90年代でヤラれたあの声のまんまで、しかもオーケストラとのハーモナイズもキッチリ合わせていて、値段以上の体験でした。

曲間のベシャリは基本的に無かったですが、最後の曲前で日本に来て初めて桜の花を見たという可愛らしいエピソード聴いて8千人のハートを撃ち抜いてからの、ハイパーバラッドで昇天、アンコールでOvertureインストからPluteの激しめなアレンジで駆け抜けてあっという間の75分でした。

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親切な人がすかさずセトリ共有してくれてた。

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最新型の方も気になってきた。

自分のビョーク

1991 808 State / Ooopsの衝撃で12インチはリミックスも買いました。

1993 初ソロHuman BehaviorのUnderworldリミックスで再びガツンとヤラれてからのアルバムリリースで崇拝モード。

1994 シングルカット連チャン、Violently Happy / Masters at WorkリミックスやCome to Me / The Black Dogリミックスで10インチプロモ沼落ち。

1995 ファーストの熱気冷めやらぬうちにArmy of Meシングルカットとアルバムリリース、808のグレアム・マッセイが何曲か提供で狂喜。

からの神曲Hyperballadで永遠のファン誓う。

あと、地味にI Miss YouはUSプロモ頑張って探した。

1997のホモジェニは、今考えるとこれまた名曲揃いだが、アルバムはギリ買ったがシングルカット購入怠っていた、死。

LFOのマーク・ベルも絡んでいるのにね。

1998 Plaidのアルバムで彼女が参加、当時こっちのが聴いてたかな。

2001 VespertineはマソハッタソからD○R転職後だったと思うが、これまたギリ買ってた。マシュー・ハーバートも参加してたからかも。

2004 メダラは、レコ屋引退後だったので買ったか買ってないか曖昧。家探しても出てこないから買ってないか、人間失格

からの、Volta以降もLP買いサボっているので反省して少しずつ集めます。

で、何やかんや約30年の時を経て姫に謁見、一緒に行った会社のマイメンはフジロックや科学未来館トーク&ライブも観てるの偉い。

 

とにかく、今夜のライブは生涯の思い出になる最高の内容でした。ハイバラの時は、感激して少し泣いてたと思う。

レストラン神谷

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アド街でもランクインした聖蹟桜ヶ丘の老舗、レストラン神谷が2023年3月21日に閉店する。一か月ほど前に店頭や地域ニュースで発表されてから、神谷フィーバーが始まり毎日激混みの様相。予約も満席が続いておりやむなくテイクアウトでハンバーグを家族分購入。オールドスクールな店内は、広さに対して客席に余裕を持たせていて、ゆっくりと食事が楽しめるのが良かった。義父も一度いっしょに来てたいそう気に入っていた。ハンバーグは箸やナイフを入れると、ずっしりとした肉の密度を感じる。それは近江牛肉の旨味もそれだけ凝縮されているという事になる。なので見た目以上に食べごたえがあるが、子ども達はペロリと平らげてしまった。ハンバーガーにしたらこれまた美味いだろうな。精肉店は営業を続けるらしいから、また買いに行こう。

 

パンピーハナレグミの"家族の風景"をサンプリングした曲がCMに使われていると評判で観てみた。相鉄の東急直通記念CMだった。相模鉄道、大学の就活で行った。既に大氷河期に突入していたが、土木科/専門職だったので一般職よりはチャンスあるかと考えていたが甘かった。一次は通ったが、二次に出てきた横柄高慢な部長?の圧迫面接が最悪だった。保線に関するマニアックな質問責めに、しどろもどろな回答で結局落ちたが、こんな人間が要職に就く私鉄なんぞ二度と乗るまいと誓った。彼は、圧をかけた人々も乗客になるかもしれないという想像力は無いのだろう。自分がいま延べ100人近くか、それ以上の人々と面接をしてきたので、あのギトギトした脂身部長を反面教師としていつも心に留めている。曲は、原曲も好きだし良い感じと思ったけど、脂身部長で相鉄憎しの呪いと、シャレオツイメージ向上剥き出しの鼻につくPVに耐えられずdislikeボタンを押してそっと閉じた。

Obscure City Pop CD's 1986 - 2006

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バブル絶頂期からCD黄金期までの、まだ日本の経済力が一定の効力を持ち得た時代に星の数ほど生み出され、埋もれたり忘れ去られたCD達を掘り起こし続ける緩やかな集団の成果物。今ではよく知られる盤から、バブルの徒花としか言いようの無い極めてオブスキュアな盤まで膨大な作品がリストされている。声優系、モデル系、女優系など純粋なミュージシャンとは違う系譜から、シティポップ的価値のあるお宝曲を発掘する悦びが誌面からも存分に伝わってくる。気になる曲、さすがにCDで探す気力労力は持ち得ていないのでストリーミングサービスで探したり。執筆陣を見ると、個人的にもチェックしていた"90年代シティポップ記録簿"のブロガーの方も参加されていた。

今年のRSDラインナップが発表された。空前のレコードブームが続いてる割に、正直そこまで喉手盤は無かった。この本に掲載されている盤でも、LP化したら人気出そうなものあると思うんだけど、レーベル側の人にもそこまで熱量持ってる人おらんだろうな。あと、転売屋共を駆逐するためにも宇多田ヒカルや藤井風や山下達郎なんかは、もうしばらくプレスし続けて欲しい。それとも、いつかブームが去ったらこれらも中古市場に溢れかえるんだろか。

P.S.K.使いのアレ

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もう、レコードのことなんか投稿するのやめた、と思ってたんですが、100レコで転がってそうでなかなか見つからなかった盤を30年越しに捕獲したので上げてみよう。

ポスト・パンクあるいはゴスロック界隈では有名なスージー&ザ・バンシーズが1991年に出した"Kiss them for me"はヒップホップ・R&B好きは見逃してはならんブツなのです。なんつったってビートは全面的にスクーリーDのやさぐれ大名曲"P.S.K."をまんま使い(弾き直してるかもしれないが)、そこにブレイク前のタルヴィン・シンがタブラを叩いてエイジアン風味のトラック、スージーもPVではド派手メイクをかなぐり捨ててナチュラルかつ妖艶な雰囲気で新境地を見せることに成功している。

ワイはこの曲をビートUKで見て以来ずっと探し続けていた。UK盤は何度か見たがこの度初めてUS盤にご対面、めでたく落札したのです。ジェーン・マンスフィールドに捧げられたこの曲は、PVでもピンク色の背景や小道具が散りばめられ、シャンパンやプールなども彼女が所有していた邸宅にインスパイアされているものと思われる。チャートアクションもなかなか良かったらしくスージー&ザ・バンシーズもこの路線でバンバン曲量産してくれたらよかったのだけど、そうはならなかったな(残念)。

色々と調べてみたら10年くらい前にはSchool of Seven Bellsがカヴァーしていた。こちらも7インチあるのか…欲しい…